図に乗りるのも・・・

2025/07/11

 そんなに図に乗ってると、あとでひどい目にあうよ等と使われるように、図に乗るとは否定的に解釈されることが多いようですが、本来の意味からすると、図に乗ることはとても大切なことでした。
 仏教の声明の一つに、梵唄というのがあります。仏の徳を讚えるために、経文や偈頌を唱詠することです。音符に従い、曲調に乗せて厳かに吟詠するわけです。これに用いられる楽譜は、いわゆるおたまじやくしとは違い、音の高低や長短を「図」で示してあります。ですから、図表通りにうまく唱詠できれば、「図に乗った」と言われ、あるいは「調子に乗った」と言われたのです。つまり、転調を上手に唱えられることが「図に乗る」ことですから、本来は 誉められるべき良い意味だったことがお判りでしょう。
 でも言葉は生き物です。声明の図について言い表された表現が、仕事が順調に進むことや思いどおりに事が拶ることを表すようになると、「図に乗る」「調子に乗る」状態が、さらに転じて、<図に乗りすぎていい気になること> <つけあがること>を指すようになり、このあたりから悪い意味に転落しはじめたようです。
 音楽では「調子がいい」ことは大事ですが、この句の頭に「あいつは」とつけてみてください。とたんに悪い意味に変わってしまいますね。たしかに、お調子者では困ります。「図に乗る」という言い方がマイナスの意味になっているのも、これと似た事情からでしょうか。
 一方、声明の「図」が声の調子をも指図していることから、「図」とは指南書のことともなり、考え目指すことの意ともなり、狙いどころを表す語ともなりました。また、「図に乗る」を「頭に乗る」と書くこともありますが、これは単に漢字が入れ替えられただけでしょう。
 とにかく、図に乗ったり調子を合わせたりすることは、物事を順調に捗らせるためには必要です。要は、いい気になったり、つけあがったりしないことですね。順風満帆な時ほど、心して暮らしたいものです。

 

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