初 夜

2025/06/13

「初夜」というと、新婚の夫婦が迎える第一日目の夜のことと思われるかもしれませんが、仏教における「初夜」とは夕方に近い夜、つまり、いわゆる宵の口のことを指します。これはインドでは古来より一夜を三分して、初夜・中夜(夜半)、後夜(夜明け近く)とする考え方があって、それが仏教を通じて日本へも伝わったのです。ちなみに、昼も三分して晨朝・日中・黄昏(入相)と呼ぶことも申し添えておきましょう。
 さて、具体的に何時から何時までが初夜に当るのかは、時代によって定め方が違いますが、おおよそ午後六時頃から九時頃までと考えておけばよろしいかと思います。そして中夜は午後九時頃から午前一時頃まで、後夜は一時から五時までとなります。
 ところで長唄の『娘道成寺』に、こんな一節があります。
「鐘に怨みは数々ござる、初夜の鐘を撞く時は諸行無常と響くなり、後夜の鐘を撞く時は是生滅法と響くなり、晨朝の響きは生滅々已、入相は寂滅為楽と響くなり。聞いて驚く人もなし、われも業障の雲晴れて、真如の月を眺め明かさん」----この文を読むと、お寺の鐘は一日四回撞くように受け取れますが、実際には明け六つと暮れ六つの二回撞くのが習わしです。つまり、明けは後夜と晨朝の合するあたり、暮れは黄昏と初夜の合する頃に、両方にまたがって撞くということですね。ちょうど、除夜の鐘がゆく年・くる年の二年にまたがって撞かれるのと同じとお考えください。
 それからもう一つ。現代人の常識では、一日の始まりは朝のように思っておりますが、古は初夜が一日の始まりでした。つまり、一日は初夜から中夜・後夜と次第して朝を迎え、日中を過ぎて黄昏で終るのです。ですから、いまでも禅の修行は初夜坐禅から始まっているのです。これらをふまえれば、結婚初夜とは夫婦となって迎える人生の第一歩、共に歩む長旅の第一日の第一歩ということになります。心して過ごしてほしい初夜とは言えないでしょうか。

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